【マイスター工房通信】割れの修理~ポストパッチ編~

みなさま、こんにちは。
弦楽器修理担当の石川です。梅雨が始まり、暑くてジメジメしていますが換気もしないといけないので皆さん大変ですよね。爽やかなクラシックでも聴いて何とかやり過ごしたいところです。

割れの修理~ポストパッチ編~

今回は割れ修理の内のひとつ「ポストパッチ」という修理についてお話します。
バイオリンの表板はスプルースという比較的柔らかい木材を削って作られていますので、気を付けて使っていても打ち所が悪かったり、環境の変化によっては割れてしまうこともあります。そして重い落下物が当たったりバイオリン自身の落下によって、駒の真上に強い衝撃が加わった時、駒に接している部分が外側からは駒の圧力、内側からは魂柱の圧力に挟まれて割れてしまうことがあります。表板自体が薄い場合長年の弦の圧力で駒と魂柱に挟まれるので、表板が耐え切れず割れてしまうこともあります。駒足の下が割れてしまうと通常の割れの修理では、弦の張力による駒と魂柱の圧力に耐えられずまた割れてしまう可能性が高いのです。そこでポストパッチという特殊な修理を行うことになります。

こちらのバイオリンは丁度駒が接している部分を通り過ぎる形で大きく割れてしまっています。

まずは表板を剥がして裏側の割れの周辺にサイコロのような木のブロックをつけていきます。

取付けた木のブロックを挟むようにして小型のクランプ(締め付ける道具です)を取付けて締めることで割れを接着します。

割れの接着が完了したら台座に固定し上から石膏を流し込みます。

表板の石膏ができました。この石膏の上に表板を置き固定して作業を行うことで、安定した精密な作業が可能になります。

裏側の割れていた箇所を長細いお椀の形に薄く削り取っていきます。

削り取ってへこんだ部分に別のスプルースのブロックを隙間なく接着します。

接着した別のスプルースを整形していきます。これがポスト(魂柱)パッチ(補強材)と呼ばれ外側の弦の張力と内側の魂柱の圧力に耐える補強となってくれるのです。今回は割れの長さが長かった為ポストパッチの下に別のパッチも追加して取付けています。

これが接着してニス補修する前の表板です。

これがニス補修をした後の表板です。目立たなくなりました。

割れの修理が完了しまた演奏できるようになりました。駒下の割れはバイオリンにとってダメージが大きいですが、正しい処置を施せばまたずっと使うことができます。


記事に掲載されている情報は、掲載時点の情報です。イベント情報、商品情報、在庫状況など、掲載時点以降に変更になっている場合もありますので、あらかじめご了承ください。

コメントを書く

必ずお読みください

  • コメントを送信すると、名前・本文に入力した内容がこのページ上に表示され、どなたからでも見える状態となります。
  • 不特定多数の方が閲覧する可能性がありますので、電話番号・メールアドレス等の個人情報は書き込まないようご注意ください。
  • 個人の特定につながる内容が記載されている場合はコメントを削除させていただきます。その他コメントガイドラインについてはこちらをご覧ください。(新規タブで開きます)
  • HTMLは使用できません。