14品目 「当たりハズレ」の考察

ハズレは「音」ではないと思う





今回は巷でよく聞く「当たり個体とハズレ個体」について考察しようかと思います。
この当たりハズレの議論、非常にオカルト的で「この理論で決定」となるには、データ検証に膨大な時間を要しますので、おもしろ記事として読むのが丁度良いかもしれません笑
しっかりとしたデータを取るには、楽器店のいち店舗では時間も設備も足りません。
毎日、データのためにジャカジャカと弾いていてはさすがに怒られます笑
なので「アマチュアの範囲内で確認できた個体差論」として読んで頂けると幸いです。




まずは「当たり個体」について認識を共有

雑誌などを読んでいるとベテランミュージシャンが「このテレキャスターは当たり個体だったから一瞬で惚れた」というような発言を頻繁に目にします。
この発言を読むことにより「へぇ個体差があるんだ」と認識するようになるのが、一番多いパターンではないでしょうか。
すると自分のギターが当たりなのかどうかめちゃ気になってくる、というのもあるあるですよね。
実際にそのミュージシャンのギターを弾く事もできないし、会って「どういう点が当たりなのか」と聞きたいけれど、まぁ実現するには相当困難な話です。
そうするとイメージが先行するようになってきます。
「音のヌケが良いのかもしれない」「音が太いのかもしれない」「聴いた瞬間チビるのかもしれない」などなど、イメージが先行してきます。

ここで当たりハズレ議論について、大前提とする条件を敢えて定義するとすれば、

1、現行品の場合、木材、塗装、細かいパーツを含め完全に同じモデルを弾き比べた。

2、ヴィンテージや中古の場合、全く同じ年(例:1965年製など)に製造された同じモデルを弾き比べた、かつ適切なセッティングがなされている状態。

このどちらかの場面に該当しなければ「これは当たり個体だ」という発言は控えたほうがいいかもしれません。
理由は簡単で、全く違うモデルを弾いた、もしくは比較を弾いておらず直感で「当たりだ」と言っても定義が他人には分からないからです。
なので、当たりだ、と言うよりは「気に入った」という表現のほうがいいかもしれません。
もしくは「しっくり来た」とか。

なんだコイツややこしいな、とウザがられるかもしれませんが、ここは結構大事で「音が良いなと思ったから当たり個体」という定義になると、もはや説明とかどうでも良くなるからです。

つまり、当たりかどうか気になる場合は、全く同じ機種を弾き比べなければあまり意味のない不毛な議論ですよ、と言いたいのです。




ボディが鳴っていると、結局どうなるのか

こんなことを書いている記事もだいぶ少ないと思いますが、一概に「うわ鳴ってる…」という観点だけで当たり個体だと判別するのは違うと思います。
そもそもですが、木材がバッチバチに鳴っていたらどうなるのかというと、重低音の成分が減ります。
そう、減るのです。
その代わり、中音や高音が目立ったりします。
低音にマスキングされていないからです。
楽曲のミックスやマスタリングをやったことがある方なら分かるかもしれません。
濃すぎる周波数を-1dBしてみると、他の音域が聴こえやすくなる現象です。
ほぼ、アレです。
結局「弦を手で弾くことで得られたエネルギーをどのようにしてピックアップに届けるか」という物理的な現象が起きているのです。
例えばフルアコのようにボディに空洞がある場合、ボディが爆鳴りしていることになり、ズクズクとした重い低音が出ることはなく、変わりにポコポコとしたアコースティックな中低音がよく出るようになります。
これを人々は「独特なエアー感」「暖かみのあるサウンド」と形容します。
それとは逆に、重いボディ材を使用したレスポールの場合、歪ませた時などにズクズクとしたヘビィな低音が出てくれます。
軽いもしくは重いテレキャスターなどのシングルコイル系でも同様に低音面に変化が起きます。
それはエレキベースでも同じで、例えばかなり重いジャズベースでは意外な重低音をアウトプットしてくれます。
重いアッシュボディのジャズベースは、確かにバチンとした高音成分もよく聴こえますが、ウッドベースのようなポコポコとした中低音があまり無く、重心がもっと下で、高音と低音は遠い存在のなのでお互いをマスキングせず、高音が聴こえやすくなっているというわけです。
簡単に言うと「丁度いいドンシャリ」ですかね。
アッシュ/メイプルのジャズベ=スラップ仕様、はイメージが先行しすぎているかもしれません。
ただし、スラップ向きなのは確かです。
つまり、スラップばかりではなく、オーソドックスな演奏をしてみるとブーミーな中低音が出ないのでボーカルを食わず、意外と歌モノにマッチしたりする、ということです。



なぜ低音に変化が起きるのか

ベースの話に脱線してしまいましたが、ではなぜ、ボディが鳴っていると重低音の成分が減るのかを考えてみましょう。
答えは結構簡単で、考えてみれば分かる話なのです。

手で弦を弾く→弦が振動する→木材に振動が伝わる→軽いボディの場合はよく鳴るので振動のエネルギーがボディに分散して重い低音成分が減る重いボディの場合はボディがあまり鳴らず振動のエネルギーが分散しないので重い低音成分がピックアップ付近に残る。

ということになります。
なので、ボディがよく鳴ると低音が減ります
その結果、中音が聴こえるようになりいわゆる「ヴィンテージな音」になります。
古い感じの音が好きならば、軽いものを選ぶと刺さるかもしれませんね。
逆に重い音が欲しい、よく歪ませる、アタック感が欲しいという時は重いものを選んだほうが相性が良いかもしれません。



塗装の厚さで低音が変わる

レゲエマスターで有名な「moon」というブランドのギターは極薄のラッカー塗装で、例えば爪で引っ掻いたら傷が付くぐらいです。
この塗装が薄いメリットは何なのかを考察すると、やはりボディが揺れるのでいわゆる「鳴り」が良くなります。
上記の通り、鳴りが良いと低音成分が減るので、あっさりとした中音寄りのサウンドになります。
ヴィンテージなサウンドなので、ズクズクと刻みたい方には向かないかもしれませんが、オーバードライブサウンドやクランチ、クリーンサウンドがメインの方であればこの上なく刺さる音だと思います。

これとは逆にポリ系の分厚い塗装の場合、何が起きるのかというと、まず耐久性が格段に良いです。
乾燥、湿気からガードしてくれますし、少しぶつけても意外と傷にならなかったりします。
次に音質面は、ボディがあまり揺れないので、低音成分が分散せずピックアップ周辺に残るので出音がヘビィになりやすいですね。
やはりズクズクとした重い音が欲しい場合は、ラッカー塗装ではなくポリ系の塗装に頼ったほうが話が早いです。
また、塗装がぶ厚いということは単純に重量も増大します。
重いギターは低音が出やすいので理にかなった選択だと思います。






当たり個体、セッティング面は無視できるのか?


これは最重要ポイントですね。
例に挙げると、ピックアップ高がデタラメな状態で、遠すぎて上手く弦振動を捉えていない、もしくはピックアップが弦に触れそうなほど近いような状態で、そのギターの良し悪しを判別できるのか、という疑問です。
安価な新品の場合、工場出荷時に決められたセッティングが施されて店頭に並びますが、20万円オーバーのような高い新品の場合は、その個体に合わせてきっちりと調整がされていることが多いです。
その分の技術料も値段には入っていることになるのでしょう。

ここで言いたいのは、実は安いものほど当たりハズレの波があり、その頻度が多いのではないかという説です。
「安い」という定義はここでは10万円以下としましょうか。
ちなみに僕はだいぶ貧乏なので決してセレブではありません笑




当たり個体、実際に遭遇すると説明ができない

例えばですが、2021年現在では10万円を切る価格でFender Playerシリーズが販売されています。
メキシコ製のフェンダーですね。
三宮店には結構置いてありまして、全く同じスペックで色違い、という当たりハズレの判別が非常にしやすい環境でした。
そうすると、たまーーーにあるんですよね、コイツだけ音がやけに元気だな、とか。
これぞ個体差です。
それに関しては、ピックアップ高やその他の箇所をチェックしましたが、これといった違いがなく、出音だけやけに元気でした。
同じピックアップでも製造時にコイルの巻き数にムラが発生するのでしょうか、謎です。
こうなると「まさか当たり個体ってやつですか?」と思わざるを得ませんでした。
当たってる個体を紹介してしまうと、自分の偏見によって販売の際に平等性がなくなってしまうと思いましたので、どの個体なのか紹介は控えます。



そして、上記にある例えば20万円オーバーの高いギターですが、個体差がそこまで開かないことが多いです。
もはや、どれも良い音だし弾きやすいです。
その個体差が、例えばアンプのEQを2mmぐらい動かしたぐらいの差だったとしたら、僕は気にしません。
ライブハウス/スタジオの環境、さらに言えばその日の体調でも聴こえ方なんてコロコロ変わりますし。
Fender Playerシリーズのようにあまり説明がつかないオカルトな個体差も存在するから面白いわけですが、高いギターになればなるほどこの個体差の概念は気にしなくても、大体は良い音が出ます。



古いギターの当たりハズレ論

次にヴィンテージや中古の場合、ここで価格は問いません。
こちらはやはりセッティングが全てになってくる気がします。
2021年現在、三宮店では中古ギター/ベースはネックや弦高、ピックアップ高なども可能な限り調整して販売しています。
もしこれが全くの無調整の場合、それはいわゆるハズレ個体になるのではないでしょうか。
弦高もピックアップ高もデタラメ、ネックも反っている。
例えばそんな状態のもので良い音が出るはずもないのです。
なので、ヴィンテージや中古に関しては当たり個体を探すというよりは、ハズレじゃないやつを探す、という思考のほうがいいお買い物ができそうです。
また、これは余談ですが経験則上、ある程度のクオリティを持つギターやベースは製造されてから月日が経つと、例えば和音の分離が綺麗になっていたり、高音の雑味が減っていたりなどの現象が見られます。(これも要因を特定しにくいオカルト的な要素)
これを当たりハズレとしてカウントすると、ギター選びがより難解となってきますので、僕の場合はあまり気にしていません。
逆に、経年でネックが波打っている、腰折れしている、ポットのガリが激しい、特定のピックアップが不調などなど、通常使用に問題がある症状に関しては「ハズレ」と見なしてよいかもしれません。
ちなみにネックのねじれについては、どんなギター/ベースでも発生しやすいので、程度が激しくない限り神経質になりすぎると良い出会いを逃しやすいです。




結論 「当たり」の概念、もう忘れよう。

当たり個体という言い方はやめたほうがいいかもしれません。
やはり「個体差」と呼ぶべきなのでしょう。

「当たり個体が欲しい」と思っているとワケが分からなくなってくるので、もうそういう概念を忘れてしまったほうがいいかもしれません。
そして、ギターの重量やピックアップの高さなどで大幅に音が変わってくるので、「こういう個体なんだな」と思う程度で留めたほうが良いと思います。

ちなみにですが、自分はヴィンテージギターをメインで使用していますが「これは当たり個体だ!」と思ったことは1度もありません。
同じ年代のモノを弾き比べた経験がないからです。
現状ネックも問題なく、他のパーツに不良もないので「ハズレではないものを手に入れることができて良かった」と思っている程度です。
また、新品で「ハズレ」というのは滅多にありません。
これはダメだハズレだ、という新品はそうそうありませんのでご安心を。
これからは「当たりハズレを見極める」のではなく「当たりという概念など忘れて自分が気に入るモノを探す」という考えにシフトした方が楽だし、精神衛生にも良いです。
当たり個体という非常に謎が多い概念よりも、分かりやすい概念「軽いヤツはハイ/ミドル寄り、重いヤツは低音が出る法則」を使用したほうがお買い物で失敗しないかと思えます。
ヴィンテージ、中古の場合は、セッティングがきちんとされているのかも充分気にしたほうがいいと思います。

次回はギター選びについて熱く語ろうかと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。









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