12品目 JC-120の音作り

マーシャルの様なハイゲインは無理、という諦めも肝心







前回のマーシャルの音作りに引き続き、Roland JC-120 (Jazz Chorus)の音作りについて言及していきたいと思います。
このアンプも、マーシャルと同様どこのライブハウス、スタジオでも見かける大定番アンプです。
エフェクター無しでは一切歪まないので苦手な人も多いかと思いますが、音作りがクリーン~クランチをメインとするプレイヤーは是非マスターしておきたいアンプです。
マーシャルと同じく覚える箇所が多いのでだいぶややこしいですが、是非読んで頂けると幸いです。







まずは歴史


1975年に発売されたジャズコーラス(以下、JC)
当時は真空管アンプがメインだった時代ですが、このJCはトランジスタを用いた真空管非搭載のアンプです。
まだデジタル革命(1980年代の産業革命)が起きていない世界線ですので、厳密にはデジタルアンプと呼ばないほうがよさそうです。
言うならばまだギリギリエレクトリックの時代です。
知っている方も多いですが、初期のJCは電源ボタンがトグルスイッチ型で、現在の四角いボタンとは全く違います。
また、この初期型JCはイコライザーの効き方も現在とは少し異なっており、いつもの音作りが通用しないというトリックスター的要素も含んでいます。
モコモコとしたニュアンスになりやすく、音作りがより難しいので注意が必要です。
ちなみに電源のトグルスイッチは上がオン、真ん中がオフ、下もオンなのですが、それはコンセントの極性を挿しなおししなくても変えられますよ、という仕様です。

また、コーラスのエフェクトが搭載されているのですが、アンプ界では非常に珍しいことです。
そして「コーラス」というエフェクトはこのJCから始まっています。
後に「BOSS CE-1 Chorus Ensemble」が登場しますが、これはJCのコーラス/ヴィブラートを抜き出したものになります。
つまり、JCがコーラスの原点になります。
このJCが登場する前にすでに「二本のギターをピッチを少しずらして同時に再生すると超かっこよくなる」という現象を一部のギタリストは発見していた、という話も存在します。

また、これは単なる噂なので裏は取れていませんが、JCはもともとエレキギター用として開発されていなかったのでは、という説があります。
ディストーションスイッチの変な効き方や、ミドルつまみで上昇する周波数帯がエレキギターとしては変わっている音域である、とか腑に落ちる部分が多々あります。
ヴィブラートなども当時のエレピなどとは抜群の相性ですが、エレキギターだと結構トリッキーな効果になりやすいです。
後で裏技も書きますが、基本的にギターアンプとしては変わっているところだらけなので、「これキーボードアンプの前身じゃないか?」という噂が立ってもおかしくないです。
実際のところ、どうなのかは分かりません。

真空管が搭載されていないので、衝撃で割れないし突然鳴らなくなるなどのトラブルが少ないという特徴は非常に重要です。
丈夫なクリーン用のアンプとして様々な場所で置かれはじめて現在に至っています。



JC使いには様々な流派がある


「JCはこうやって使うと音が良い」という意見があまりにも多すぎて「音が良いとは何?」という禅のような世界に足を踏み入れることになります。
なので「音が良い」という言い方で人には勧めないほうがいいですね。
「こんな方法がある」という提案が丁度良いでしょう。
まるで流派のようです。

それでは有名な流派を紹介しておきます。


【ハイ挿し流】
フロントパネルのCh1もしくはCh2の「HIGH」を使用する流派。

【ロー挿し流】
フロントパネルのCh1もしくはCh2の「LOW」を使用する流派。

【リターン挿し流】
プリアンプを自前で用意し、JCの裏側にある「リターン」に繋いでパワーアンプとスピーカーのみを使用する流派。

【チャンネルリンク流】
フロントパネルのCh1とCh2を用いて「チャンネルリンク」する流派。

【ディストーション・オン流】
ハイ挿し流、ロー挿し流の応用で「Distortionスイッチ」をカチッとオンにする流派。

【ヴィブラート・ゼロでオン流】
ハイ挿し流、ロー挿し流の応用で「Vibrato」をオンにする流派。


このように、無限にありすぎて終わらないのがJCです。




JC-120を使いこなす方法

使いこなす方法は、覚えることしかないです。
このスイッチはどんな効果なのか、HIGHとLOWは何を意味しているのかなどなど、覚えることが多すぎて正直面倒くさいです笑
まず基本的なところから攻めていきましょう。

↓JC-120の左側にあるチャンネル1。




↓JC-120中央あるチャンネル2。






【ハイ挿し と ロー挿し】

これはプロントパネルにあるインプットジャックのことになります。
よく見ると「ハイ」「ロー」で分かれています。
これは「ハイインピーダンスとローインピーダンスのことだ」と理解はしているけどどう効果があるのかまでは知らない人がほとんどです。
実は「ハイは音量が大きい挿し口、ローは音量が低い挿し口」という解釈が最も早いです。

つまりハイに挿すと非常に音量は大きく、ローに挿すと音量はやや低めになります。
これは内部回路としてはインピーダンスの関係が出てくるのですが、非常に煩雑な内容なのでここでは割愛しましょう。
スタジオやライブハウスなどの室内で演奏する時はロー挿しのほうが正直扱いやすいです。
ハイに挿した場合、ボリュームが8時ぐらいだというのに凄まじい音量だったりするからです。
アンプのボリュームが大きいとボーカルも食いますし、総じてあまり良いことは起きません。
爆音のシューゲをする、耳栓必須のマイブラのコピーをするとか、そういうアホな音量が欲しい時は是非ともハイ挿しですが、ギターロックをする場合、特に歪みエフェクターを繋ぐという際は「ロー挿しで様子を見る」という方がやりやすいかもしれません。



【チャンネルリンク】

↓黄色いシールドに注目。これでチャンネルリンクができる。

↑挿し口による組み合わせは何通りもあるので写真は一例。


オールドマーシャルなどで見られる「2つのチャンネルを同時使用できる裏技」です。
例えば、Ch2のローにギターを通常通り繋ぎ、上のハイのジャックに他のシールドを挿す→そのシールドをCh1のローに挿すとチャンネルリンクが完成。
これにより2つのチャンネルのつまみを同時に使用することが可能になるのですが、真空管アンプではないのでボリュームを上げても歪むことはありません。
また、バンドアンサンブルにそぐわない爆音を生成することになりやすいので、想像しているような効果は得られないことが多いので過度な期待は注意。
意味がない、とまでは言いませんがマーシャルのようにはいきません。
例えば濃い低音が欲しい時などは一度試してみてはいかがでしょう。




【ディストーションスイッチ】


Ch2に内蔵されているつまみ。
通常のつまみではなく、オフの状態から少し回すと「カチッ」という感触があり、それによってオンとなる。
上げていくと歪みのような「謎のパリパリ感」が付加されていき、誰もが一度困惑します。
このパリパリ感と同時にミドルが上昇する効果があるため、イコライザーの設定には注意が必要。
例えば思い切ってミドルをゼロにしてみるなど、常識にとらわれない発想が重要です。
このディストーションスイッチ、上げすぎるとただやかましい音になってしまうのですが、例えば10時ぐらいまでですと非常に実用的だったりします。
ただのミドルブースターではなく、若干の歪みも付加されるので「あともう少し音圧ほしい」という感覚を埋められたりできます。
チューブスクリーマーなどの有名なオーバードライブとはもちろん、現代的な歪みとも相性がいい効果なので、ディストーションスイッチは一度試してみるとよいかもしれません。
足元のエフェクターなど、機材がシンプルになるかもしれませんね。




【コーラス/ヴィブラート】

↓JC-120の右側、コーラスとヴィブラートのつまみ。

↑スピードとデプスのつまみはヴィブラート選択時のみに動作するので、コーラス選択時は意味がない。




まず、このJCのコーラスは絶品なので一度も聴いたことがないという方は是非とも鳴らしてみて下さい。
非常に立体的で、哀愁があり、クリアで……この上ない完璧なコーラスサウンドが聴けます。
「JC-120のコーラスに近いコンパクトエフェクターはないのか?」という質問が非常に多いのですが、JC-120、実は普通のコーラスサウンドではないんですよね。
ステレオコーラスなんです。
ステレオコーラスとは、本来2台のアンプを用いて完成されます。
なので、他のアンプ1台でJCのようなコーラスサウンドは再現不可能になります。


↓名器BOSS CH-1(SUPER Chorus)の左側面。

↑よく見るとステレオアウトになっており、2台のアンプを使用すればステレオコーラスになる。


JC-120のコーラスは右のスピーカーのみから再生されており、左のスピーカーからはコーラスのかかっていない原音が流れています。
そのため、ライブで使用する時は左右のスピーカーそれぞれの前にマイクを合計2本立てないとコーラスサウンドはPAに送れません。
なので、ライブでは足元のコーラスエフェクターを用いた方が早いです。


次にヴィブラートですが、つまみを上げるとピッチが揺れるコーラスに近い効果を聴くことができます。
このヴィブラートも素晴らしい音色ですが、つまみを両方ゼロにしてオンにすると少し音が奥に引っ込む効果になります。
ミドルが落ちてコンプ感が出る感じです。
意外と使いやすいので「JCの音は耳に痛い」という方は是非お試しあれ。
ちなみにつまみを両方フルにすると、例えばイントロとかで使えそうなアバンギャルドな効果を得ることが出来ます。



【ブライトスイッチ】

↓現在はボタン式、初期~中期はレバー式だった。



各チャンネルに装備されている「ブライトスイッチ」は、初手はオフにしておくことが良いかもしれません。
これをオンにしていると、ソリッドギターではかなり耳に痛い音が創出されます。
例えばVOX AC30のトレブルブーストの感じが欲しい時などはオンにすると効果ありですが、やはり耳に痛いので突発性難聴などに注意が必要なほどの鋭い音になります。

そのほか、例えばフルアコを使用時、低音が邪魔になってしまっている時などは、一度オンにして副産物的なローカットの効果を利用してみるのも手段。
この辺りは弾き手の趣味なのでルールはありません。
そして、スタジオ、ライブハウスなどでJCを使用する際は「ブライトスイッチがオフになっているかどうか」を必ず先にチェックした方が身のためです。



【リターン挿し】


↓背面パネル、リターンにエフェクターを入れる。



もう有名ですが、JCのプリアンプ部を使わずにパワーアンプとスピーカーのみを使用するやり方です。
自前のプリアンプエフェクターをリターンに挿すだけです。
これにより、JCのプリアンプ回路を飛ばして自身の機材本来の音色を引き出す方法です。
注意点は、爆音になりやすいので、自前のプリアンプのボリュームはかなり注意が必要です。
エフェクターのボリュームをかなり下げてから使用した方がいいですね。
さらに注意点ですが、パワーアンプ部は当然ソリッドステート(真空管非搭載)なので、結局JCっぽさからは完全に抜け出すことはできません。
最終的にはやはり硬質でハイミドルの立った音です。
リターン挿しで完全に解決だ、という思考は恐らく落胆を招きますので、過度な期待はやめた方がいいかもしれませんね。



【縦に置く】

スピーカーの位置が高くなるので演奏者がモニタリングしやすく(聴きやすく)なるのですね。
他の効果というと、キャスターではなく直接床に置くことになるので低音の成分が変化しますが、そこまで大きい変化ではありません。
「縦に置くと音がいい」という言い方はやめた方がよさそうです。
演出、雰囲気のほうが割合的には多く感じます。




【コンプレッサーをかける】


↓左:プロヴィデンス ベルベットコンプ 右:MXR ダイナコンプ・ミニ

↑シンプルなコンプレッサーのほうがジャズコには合うかも。



BOSSのコンプやベルベットコンプ、ダイナコンプなどのシンプルなコンプレッサー(エフェクター)をかけっぱなしにするという技。
真空管アンプ、とくにツインリヴァーブっぽくなりますね。
これはかなり効果ありです。
こういうものを繋がなければJCは一切コンプがかからないので、弾きにくい、歌いにくいなと感じる方は一度お試しあれ。
意外と解決したりします。




B'zみたいな音が出したい時


さて、ジャズコ対策、JC対策などの言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
「もしジャズコしかなかったらどんなエフェクターで歪ませますか」というような内容です。
永遠の課題とも言われますが、結論から書いてしまうと、マーシャルの様なハイゲインは無理なので諦めたほうがいいです。
B'zみたいな音は出せません。
プリアンプを用いてリターン挿しをしても、マーシャルのような音になるかと言われたら、そんなことはない、と答えます。

しかし、本当にJCしか使えない、やるしかない、という状況はあると思いますので、対策を書くとすれば、歪み2台同時オンがおすすめです。
片方はチューブスクリーマーやブルースドライバーのようなノーマルなオーバードライブで構いません。
JCにゲインのつまみを追加してあげるような感覚です。
同時にかけるのはマーシャルのガバナーやサーのライオットなど、アンプ的な歪みを付加できるディストーションにしてみるなど、もはや自由です。
2台掛けが面倒な時はディストーションスイッチをカチッとオン、そこにアンプ的な歪みを持つ歪みエフェクターを1台繋げてみるのも多少対策になります。
リターン挿しの場合、難易度が余計に上がる印象があります。
リターン挿しでめちゃ頑張っても、結局前面のロー挿しのほうがサクッと決まった、みたいなパターンもあるからです。
でも、JCにはマーシャルの様なハイゲインは無理です。
結構しつこく実験してきましたが、いまだにマーシャルの様なハイゲインを作り出したことなど一度もありません。
最後は「…素直にマーシャル使お」ってなります。
でもマーシャルが無い時はどうすればいいのか、となると「今日は納得がいく音作りはできないな、と諦める」がよろしいかと思います。
クランチ~オーバードライブならJCは非常にかっこいい音が出るのですが、B'zみたいな伸びのあるハイゲインな音を作るには向いていません。
この「向いていない」という言葉に全てが詰まっている気がします。



JCに合う歪みは?


JCに合う歪みの代表格はチューブスクリーマー系です。
しかもモディファイ(改造)していないやつ、マクソンかアイバニーズの本家本元がよろしいかと思います。
これ、不思議なんですが本家の、そのまんまのTSが最もJCに合うと思います。
モディファイモデルは、音量がやけにデカかったり、トーンが鋭すぎたりと、もはやTS系とちゃうやないか、という音色が多いです。
ブルースドライバーは音がパリパリしてしまってややファジー(ファズチック)です。
ガレージロックやるみたいな音が出ます。
本家TSの場合、JCの硬すぎるところをうまく「濁らせる」ので耳当たりが良く感じます。
これはコツですが、ゲイン回路が付いているアンプの時と違って、JCでエフェクターのLEVELをMAXまで上げると爆音になってしまいます。
JCにはゲイン回路が付いていないのでブースターとして使う時のセッティングが通用しません。

なので、DRIVE、TONE、LEVELを一旦12時にセッティングして様子を見てみましょう。
そこからLEVELを11時に下げるなどして音量を下げると急に扱いやすくなったりします。
色々足元や機材をゴチャつかせるよりも、チャンネル2のロー挿し、歪みとしてチューブスクリーマーを使用、というような感じでも意外といけます。
なんなら上記のディストーションスイッチもコンプレッサーも使わなくてもチューブスクリーマーだけを使用すればまとまったりします。
その代わり、B'zみたいな音は無理です。


↓もう何度も紹介してますが、Ibanez TS808とTS9です。

↑MAXONのOD808とOD9も同じくチューブスクリーマーです。MAXON商品、店頭に置きたいなぁ。




総評:色々方法はあるけど一回シンプルに立ち返ってみてはいかがでしょう。



今回も独断と偏見だらけですが、お許しください。
結局、一番のJC対策はチューブスクリーマーなのではないでしょうか。
そもそものところになりますが、JCでマーシャルの様な音を出そうとするから「違う!」と感じるだけで「JCらしいハイゲイン」認めてあげて受け入れてあげてから音を作ってみてはいかがでしょうか。
僕としてはJCにBOSS MT-2(メタルゾーン)とかを繋げた音は別に嫌いではありません。
人によっては「チープだ!」と思うかもしれませんが、それはJCならではのハイゲインサウンドだと認識すれば、別に嫌う必要なんてないと思います。
そして、マジでJCしかない、なんとかするしかない時は「諦めも肝心」です。
なぜなら、JC-120はマーシャルではないからです。
そして、クランチ~ドライブサウンドがメインの場合は、あまり食わず嫌いをする必要も無いように感じます。
いいアンプだから現在でも常設アンプとして選ばれているのではないでしょうか。
好き嫌いはあるにせよ、選ばれないモノはいつか淘汰されてしまう。
それがこの世の常です。
残ってるってことは、良いモノということなのでは。
僕はそう思えてならないのです。









記事に掲載されている情報は、掲載時点の情報です。イベント情報、商品情報、在庫状況など、掲載時点以降に変更になっている場合もありますので、あらかじめご了承ください。

コメントを書く

必ずお読みください

  • コメントを送信すると、名前・本文に入力した内容がこのページ上に表示され、どなたからでも見える状態となります。
  • 不特定多数の方が閲覧する可能性がありますので、電話番号・メールアドレス等の個人情報は書き込まないようご注意ください。
  • 個人の特定につながる内容が記載されている場合はコメントを削除させていただきます。その他コメントガイドラインについてはこちらをご覧ください。(新規タブで開きます)
  • HTMLは使用できません。