5品目 エレキギターのピックアップ(後編)

Gibson PAFってオーパーツじゃないか?



前回に引き続き、エレキギターのピックアップの解説をしていきます。
今回はギブソン系ピックアップなどをご紹介。


P-90

↓P-90 ソープバータイプ

↑石鹸に似ているからそう呼ばれるようになったらしい。(石鹸に似てるか??)


ピーきゅうじゅう、もしくはピーナインティと読む。

前回紹介したフェンダーピックアップよりも以前から存在するシングルコイルピックアップ。
時系列的には、P-90→TLPU→STPU→JMPU→JGPUということになる。
諸説あるが、現在まで残っている互換性の高いピックアップとしては最も原始的、始祖的な存在として認識してよい。

音の傾向は太く甘い。
それでありながら切れ味を兼ね備えたバランスの良いサウンド。
ギブソンサウンドを決定付けたピックアップと言っても過言ではない。
後述のハムバッカーはP-90の音に近くなるよう設計されたという話もある。

フェンダー系のシングルコイルは磁界が直線的に伸びているのに対して、P-90は扇形に磁界が広がっている。
これにより音の拾い方に影響が出るので、同じシングルコイルでもフェンダー系は切れ味の鋭い、P-90はレンジが広い甘い音像になる。
ダイナミックマイクとコンデンサマイクの指向性の違いを例えると理解しやすい。

P-90はシングルコイルであること、そしてシングルコイルにしては出力が高いことからノイズが乗りやすい。
また、(これは個人差があるが)一切歪みのない「どクリーン」で弾いた際は弾きにくさを感じることが多い。
特にRoland JC-120では、BOSS SD-1などの軽く歪むエフェクターを1台繋ぐだけで途端に弾きやすく感じることも多い。
P-90はワイドレンジであるがゆえの使いにくさがある。
特に中音域を無闇に足さず、例えばアンプのミドルは12時よりもカットする方向にセッティングするとCDで聴いたような聴きなじみのある出音になりやすい。

これは個人差があるが、やはりマーシャルアンプの歪みとは非常に相性が良く、あまり複雑なことをしていない時のほうが良い音になりやすいかもしれない。

そしてP-90は、他のピックアップよりも「ピッキングの強弱、特に強く弾いた勢いがそのまま反映されやすい」という特徴がある。(※愛用者である自分の意見です)
前述の「どクリーンでは弾きにくい」という真意は、ピッキングのニュアンスが反映されやすい真空管との相性がすこぶる良く、かつクランチやオーバードライブの状態のほうがより高揚感のあるサウンドを得やすい、という意見である。
「自分が盛り上がったら一緒に盛り上がってくれる」というようなイメージで、こういう面からもやはり愛用者は多い。

車で例えるとすれば、P-90はアクセルへの反応が非常に優秀である、というような感覚だろうか。
ドリフトに向いた車、のようなイメージはどうだろうか。

そのため愛用していると他のピックアップが弾きやすく簡単に感じることがある。



↓P-90 ドッグイヤータイプ

↑両端の三角形が犬の耳っぽいからそう呼ばれるようだ。




P-90の見た目は2種類あり、ソープバータイプ(1つ目の画像)、ドッグイヤータイプ(2つ目の画像)がある。
これは中身は同じであるが外側のカバーの形状が違っている。
両者の取り付け方に違いがあるので、まったく同じ音であると言い切れない部分がある。




詳しく解説すると、ソープバータイプはボディにスプリング(バネ)を設置してからネジで固定されていることが多い。(たまに無いやつもある)
これはピックアップ高の調整を可能にするために敷かれているが、ボディ鳴りなどはどうしてもスプリング越しに伝達されることになる。
これに対し、ドッグイヤーはスプリングは敷かれずネジでボディに直接マウントされている。
前述の通りスプリングで少し浮いているソープバーとでは振動の伝達に違いが生じることが想像できる。

(※スプリングではなくスポンジが設置されている場合もあるが、その場合も同様)



よく「カバーがプラスティック製か金属製か」での音の違いが議論となっているが、ごくわずかな影響にすぎないので1%のオカルト要素で構わないかと思う。(※愛用者である自分の意見です)



P-90の裏技としては、ピックアップ高をかなりシビアに調整するというものがある。
よくある「何mmに統一で調整する」とかではなく、やはり耳で聴いて調整したほうが望ましい。
これは個体によってジャストミートの、クリティカルのポイントが異なるからである。
(※統一で何mmに合わせることを美徳としているのはただ効率化を図るという目的以外に無い)
やはり職人技がギターの性能を引き出すというのは覆しようのない事実である。

また、クリティカルポイントの概念も言語化出来ないものがある。
特にリア側が顕著だが、クリティカルポイントにピックアップ高を持っていくと、明らかに「音が燃える」。この「燃える」という感覚は非常に抽象的ではあるが、倍音成分が濃くなるような感覚で、長年の愛用者にしか共有できないものがある。
ドッグイヤーの場合、ピックアップ高の調整はできないので、ポールピースをマイナスドライバーで回して高さを上げる。
これによりクリティカルポイントに持っていける。
フロント側のクリティカルポイントは個体やモデルによってかなり変わるので一概に書くことはできないが、リア側は弦との距離が総じて近めであることが多い。
P-90は原始的な構造を持つピックアップであるがゆえなのか、ピックアップ高での音色の違いが非常に顕著である。





↓音作りの際に必ず頭に入れておくべきピラミッド。

↑ギターの音域には中高音層と中低音層がある。



バンドアンサンブルにおいては、その甘い音色ゆえに中低音のみを意識して音作りしてしまうとベースの音とぶつかりやすい。
そのため、シングルコイル構造特有の高音成分を軸にして甘めで太めの音を想像すると失敗しにくい。
よくあるのが、ギター単体で「これドチャクソかっこいい音だわ!」と思ってバンドで合わせてみるとモコモコしていて上手くいかないという話。
「P-90は甘く太い」という拡大した思い込みが先行し、音の本質を見失ってしまった状態に近い。
音作りにはある程度の熟練度が必要となってくるピックアップである。






ハムバッカー

↓金属製のカバーが外された「オープンタイプ」のハムバッカー。

↑二つのコイルであることが目視しやすい。



正しく?はハムバッキングピックアップと呼ぶが、会話でそう呼ぶことは滅多にない。
「ハム」や「ハムバッカー」の呼称が一般的。

このピックアップは、シングルコイルのノイズが気になっていたジャズギタリストのためにセス・ラヴァー氏が考案したものである。
(※ハムバッキング構造自体はフェンダー・デュオソニックなどが先にやっていた。検索推奨)

めちゃくちゃかいつまんで説明すると、「二つのコイルを使えばノイズキャンセルできるやん」ってことに気付いて作られた。
もう少し解説する。

まずピックアップの中身は磁石である。
磁石にはS極とN極がある。
めちゃくちゃかいつまんで説明すると、SとNそれぞれ一緒に置くとジィーーーとかブーーーンっていうハムノイズをノイキャンしてくれるのだ。

うーむ、説明が難しい笑

ハムバッキングの原理をここで書くと読むが失せそうです。

これぞまさに「検索推奨」。
重要なのは、ノイズが減っているピックアップであること。


ハムバッカーの特徴は、二つのコイルを同時に使用しているためパワーが高い。
そして、ノイズキャンセルの弊害としてシングルコイルよりも高音があまり出ないという特徴がある。

パワーが高いと何が起きるのかというと、まず単純にシングルコイルよりも音量が大きい。
また、中音や低音なども濃く聴こえやすい。
人間で例えると、完全にマッチョである。

元々はジャズギタリストのために作られたものなのでべつに歪み用に作られたピックアップではない、というか開発当時(1950年代)にはロックすら無いし、歪みとかエフェクターとかの概念などまだ無かったのである。



↓金属製のカバーが取り付けられたタイプ。

↑一般的にはこちらの方が見かけた頻度が多いかもしれない。




恐らくこの情報を書いているページはなかなか無いかもしれないが、ハムバッカーには大きく分けて二つのタイプがある。
それは、クリーン志向型歪み志向型の2種類である。
つまり、まったく同じような見た目をしていても、向いている音作りの方向が違うということである。

・クリーン志向型

その名の通り、歪ませる目的ではない頃のハムバッカーを再現したものである。
一言で書くと「クリアな音像タイプ」で、クランチ、オーバードライブなどは非常に聴き心地が良い。
シングルコイルほどではないが高音成分も持っており、ヌケや艶を感じやすい。
激歪みさせると変な感じに濁ってしまい、後述の歪み志向型よりもダーティでやや芯を感じにくい、ぼやけたサウンドになりやすい。

【例】
ギブソン PAF、57クラシック、バーストバッカーなど。
セイモアダンカン SH-1(59)、SH-2、SH-55などのヴィンテージタイプ。

他にもクリーン志向のハムバッカーは無数に存在するが、その判別方法は下記の歪み志向のハムバッカーが搭載されたギターを実際に弾いてその音を頭の中に叩き込んだほうが得策である。

あとは、いわゆる「ローパワー」をアピールしているハムバッカーはクリーン~クランチ向きという解釈をしていいかもしれない。



・歪み志向型

深く歪んで真価を発揮するタイプのハムバッカー。
クリーン、クランチで弾くと音がモコモコ気味になることが特徴。
ハードロック、メタル、メロコアなど深い歪みで成立するジャンルの場合、こちらを選択した方が上手くいくことが多い。

例えば、レスポールスタジオやレスポールトリビュートなどの価格が抑えられたモデルには「Gibson 490」というハムバッカーが搭載されていることが多いが、このピックアップはクリーンで弾くと結構モコモコして聴こえる。
しかし、例えばマーシャルなどで深く歪ませてしっかり音を調整して弾いてみると、芯のある図太いサウンドを聴くことが出来る。
そのため、あまり理解せず「とりあえずハムバッカー」という状態でレスポールスタジオなどを弾くと、単純にモコモコしていて「なんかしっくり来ない」と言ってしまうことになる。

例えばパンクロック、メロコア界では圧倒的な支持を得ている「セイモアダンカン SH-4 Jeff Beck model」は完全に歪み志向型と言える。(使用アーティストなどは数え切れないので検索推奨)
SH-4 JBの深く歪んだ音を聴けば「そうそう、コレコレ、聴いたことある音」と頷きたくなる。
反対にクリーン~クランチを聴くと、上記クリーン志向型と比べてややこもって聴こえやすい。

これは向き不向きの問題であり、どちらも甲乙つけがたい。
なので、フロントにはクーリン志向型、リアには歪み志向型をマウントすることはかなり効果的である。
実際、セイモアダンカンピックアップの開発者ダンカン氏はその組み合わせが気に入っているという。

【例】
ギブソン 490系(498など)、ダーティフィンガーズ
セイモアダンカン SH-4 JB、SH-5やSH-6など、多数のモデル
ディマジオ スーパーディストーションなど

基本的にリアに向いているモデルが多い。



また、ピックアップカバーの有無で音が変わるかどうかという話がよくあるが、考えすぎてもあまり意味がないぐらいのわずかな違いとなるので、見た目で選んだほうが良い。

また、クリーン志向型のギブソン57クラシックでも、ピックアップカバーなし(オープンゼブラ)のものが存在するので、見た目でモデルを判別するのは勘違いや間違いの元凶になるので、ネットを活用してしっかり調べたほうが良い。


また、ハムバッカーの特徴として、独特のコンプレッション感がある。
P-90の後にハムバッカーを弾くと弾きやすく感じるのはそういった要因が考えられる。
初心者にとっても弾きやすいのでありがたい特性であるが、聴いていて時が止まってしまうような圧倒的テクニックを持ったプレイヤーが使用すれば鬼に金棒となる。
いずれにしても、素晴らしい音質特性を持ったピックアップである。




ミニハムバッカー

↓もともとはエピフォンギターに搭載されていたヴィンテージピックアップ。

↑コロコロとしたブライトで軽快なサウンドが特徴。



こちらは割と珍しいミニハムバッカー。
もともとはヴィンテージエピフォンギターに多く搭載されていたもので、ブライトで軽快なサウンドが特徴。
画像はミニハムバッカー本体のみだが、ギブソン レスポールデラックスなどで見られるエスカッション(PUの枠組みとなるプラスティックパーツ)を含めると、P-90のサイズとほぼほぼ一致する。
これは、P-90のザグリ(ボディの削り穴)とミニハムがほぼ一致するように製作されているからである。
P-90とハムバッカーとは全く異なる音が聴けるため、現在でも一部モデルで正式採用されていたりして生き残っている。

リアポジションの場合、ハムバッカーにしてはなかなか鋭い高音が聴ける。
センターのミックスポジションやフロントポジションはこもりにくく、かつ甘さも兼ね備えているので愛用者は多い。

(実は、最初に買ったギターはエピフォンのウィルシャーというギターだったので、僕はミニハムで育ちました)

ピックアップカバーが付いているものがほとんどのため、オープンタイプのミニハムは全然見かけない。
中身はハムバッカーなので小柄な二つのコイルが並んでいる。
そのあたりの構造は普通のハムバッカーと変わらない。

また、ミニハム搭載のモデルなどでは、通常のハムバッカーのことを「フルサイズハムバッカー」と呼称するシチュエーションがある。


・ミニハムバッカーが搭載されている代表的なモデル

ギブソン ファイヤーバード(ノンリバースはP-90)、レスポールデラックス、70年代SGスペシャル、ES-325など

エピフォン ウィルシャー、クレストウッドカスタム、リヴィエラなど

その他、カスタムモデルのギターに搭載されていることがある。


なかなか万能なピックアップなので、選択肢として覚えておいて損はないかと。




フィルタートロン系

↓グレッチギターに多く見られるフィルタートロン。

↑高音が出て噛みつき感のあるサウンドが特徴。



最後にフィルタートロン系の解説を。
このピックアップは上記のギブソンハムバッカーと同時期に製作されたハムバッカーピックアップである。

今まで紹介してきたピックアップとはサイズの互換性はなく、特殊な立ち位置にいる。
しかし、近年ではテレキャスターやジャズマスター、工房製のセミアコやフルアコなどに搭載されているモデルも存在し、20年前とかと比べるとだいぶメジャーな存在になったかもしれない。

フィルタートロンは、基本的にはフルアコ構造のグレッチギターに搭載されるよう作られているので、ソリッドボディに搭載させると高音が強く感じられることが多い。
フルアコは構造上、低音や中音が非常に出るのでクリアでギャリッとした音質で開発されたという想像ができる。
現在ではフルアコにフルサイズハムバッカーが搭載されていることが多いが、例えばジャズだけでなくロックをしよう、というシチュエーションの際は、甘く太い音だけでなく結局ギャリッとした成分も欲することになる。
その点を考えるとグレッチギターがなぜ生き残ってきたのかがうかがい知れるというわけだ。

また、TV jones(ティーブイ・ジョーンズ)というメーカーではフィルタートロン系のピックアップを多数製造しており、グレッチギターに正式に採用されているメーカーでもある。
その中でも、パワートロンやTVクラシックプラスなど、ソリッドボディ用にチューンアップされたものも製造しており、トロン系ピックアップの可能性をさらに上昇させている。
つまり「魔改造」という男心をくすぐる要素をプッシュしてくれている。




総評:深堀りしたらめっちゃ長なる…。

うあー、めっちゃ長くなってしまいましたね…。
やっぱりピックアップひとつにしても、こんだけ書くことがあるんですね。
ちなみにまだまだ補足を書かないと完全とは言えない記事です。
あとは個別に「〇〇編」という形で紹介していこうと思います。

特に、本項のフルサイズのハムバッカーの内容は必見かもしれません。
なかなかあの内容を説明しているページは無いのではないでしょうか。
あれを読むと「モコモコした音のレスポール」と「クリアな音のレスポール」がなぜ存在するのかが見えてきます。
ギターの機材は「商品の数だけ無限にある」という解釈のままいると、お買い物失敗しやすいです。
「何タイプかある」「こういう属性に分かれている」という概念を発見すると、途端に機材選びが楽になるので、これは知恵を付けた者勝ちと言えるのでは。
でも、1%のオカルトを信じなくなってしまうと、運命のギターには出逢えなくなってしまいますよ。

次はもっと初心に帰った記事を書こうと思います。
よかったら読んでください。

そして、この長ったらしい記事を最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました笑

ではまた!












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