スタッフ内藤の吹く楽器研究室 ~第07吹き~【カーボン調ベルカットトロンボーン製作記】

みなさん、こんにちは。

これまでブログ内で手が多汗であることについて露見してきた管楽器アドバイザーの内藤です。

自然にノートパソコンのハンドレストが湿ったり、楽器保護用の白手袋を次に使用するスタッフに渡すと着用の際に、なんだか納得がいかない表情になったりします。

常に手がヌルヌルしていると思われるかもしれませんが、冬は手汗が出ても逆にカサカサしています。

そして工作の際も手がカサカサになり、指紋が無くなってしまいます。

今回は以前反響の大きかった、工作の記事です。

新たにカスタマイズしたトロンボーンについてご紹介いたします。

今回カスタマイズに使用したトロンボーンは私が手に持っているM.RathのR4Fです。以前改造したようにこのトロンボーンのベルをカーボン調の樹脂ベルに換装し、更に今回はベルカット加工します。

※こちらが作業の途中写真です(ベルカット加工前です)↓

なぜカーボン風?

以前のブログ内でも紹介したように、近年管楽器の材質としてカーボンが採用されることが増えてきました。木管・金管問わず、強度や軽さが必要な部分に使用したり、音響特性を狙ってベルなど管体に使用したり目的は様々です。カーボン材は大変高価なため、プラスチックで代替しよう、と思いついたのが前回の実験です。吹奏してみて判ったのはカーボン同様、音の分離が良く暖かい響きになることです。

なぜベルカット?

過去にもHoltonやStomviなどからベルカットのトロンボーンは販売されていましたが、この1年間は多くのメーカーが競うように新製品を発売しました。私が把握するだけでも、S.E.Shires、K&H、LITTIN、Thein、クルトワなど多くのメーカーがベルカットに参入し、今回改造に使用したM.Rathも以前からベルカット仕様を選択可能です。

ベルカットにして音が悪くならないのか、と思うかもしれません。発端は海外公演の多いアーティストが機内に持ち込めるようにメーカーに依頼したのではないかと推測します。(※上の画像のようにベルカット仕様ですとビオラケースと変わらない大きさのケースに収まってしまいます!)昨年初めて吹奏してみましたが、ベルカットで音が悪くなることは無い、と感じました。ベースのモデルと比較すると、音色がフォーカスされ輪郭が増した印象です。高級ハンドメイドトロンボーンの多くが2枚取りベルであることや、トランペットやホルンでもベルクランツやベルプレートがあるように、このベルリングの位置で制振効果を調整できるのではないかと思います。海外のメーカーではカーボンベルのカット仕様もあるようです。百聞は実験に如かず。今回の実験は樹脂製のベルにベルカットリングを付ける、という注目要素満載のカスタマイズです(私が知る限りでは世界初です 微妙に)。はたして流行に乗ることができるのでしょうか。

制作風景

よく考えたら「流行に乗る」というよりは、「流行を検証」する形になります。

今回の実験もスタッフ内藤が趣味と経験を活かし、独自に行ったものです。また改造に伴い、プロの管楽器クラフトマン・リペアマンのアドバイスの元、安全に配慮し実験を実施しております。個人の改造は楽器の保証が受けられなくなり、また大変危険ですので絶対に行わないでください!

※改造過程で破損したメイン抜き差し管(曲がった瞬間青ざめました。10分後には代替パーツを注文しました。)↓

まずは改造のメインとなるベルセクションを(今回も)Pboneから調達します。今回はイエローカラーを使用します。最初から黒い成形色のものがあれば、よりカーボンらしくなるのかもしれませんが、ありませんので今回も塗装で対応します。

まずはオリジナルベルやメイン抜差し管と寸法を合わせて切断箇所を決めていきます。

そして家の外で切断します。

またやってしまいました。ベルセクションが泣き別れです。

樹脂製ベルをゲットした代わりに毎回少し喪失感があります。もう後には戻れない。

樹脂用のこぎりではなく、大工で使用する木工用のこぎりで切断しました。

Pboneベルの全長をオリジナルベルの全長に合わせてパイプカッターで切断します。Pboneとオリジナルベルでは管内の径が異なることや、この後の加工のことを考慮してわずかに長く切断しています。ここまでの作業時間はおおよそ10分くらいです。

問題はここからです。抜差し管が入る径になるまでドリルでひたすら内径を削っていきます。ものすごい切削熱が発生し、また削っても削っても、一向に管が奥まで到達しません!

やっとここまで入りましたが、この時点で3時間かかりました。作業中はなるべく楽しいことを考えながらドリルを固定することが大切です。

※よく見たら判るのですが、この時点で管が少し曲がっています。この場面を撮影した後、冒頭の画像のように管が陥没しました。相当に注意が必要です。

メイン管の修理に約一週間かかり、再び作業再開です。今回の切削のために専用の切削やすりを複数本作成!また3時間削り続けます。

最後はやや強引に管を挿入したため、亀裂が発生しています。この跡はプラリペアなどで溶融することで直します。

ここでようやく切削作業完了です。

この段階で本当に演奏可能か、吹奏チェックします。

接続用継ぎ手を百円均一で買ってきたホイッスルで作成します。エポキシ充填剤で接続用のパーツ、ボルトを固定して形を成形します。手がカサカサになります。指紋がなくなります。

前回のスーパーボーンでは継ぎ手同士が勘合による摩擦だけで固定していましたが、今回は機械的な接続と分解を目指してJISネジを多用しています。

いよいよ塗装ですが、その前にパーティングラインを削り取り、サンドペーパーでカーボンのようにヘアラインを入れます。

ようやく塗装の工程までたどり着くことができました。撮影が室内なので判りませんが、深夜の3時半頃でした。

ベルカット加工前の完成写真です。テナー用グースネックをつけています。M.Rathは実際にJAZZやPOPSで使用するブラックラッカー仕様のベルがラインナップされており、外観はそれに近いのではないかと思います。音色も良い感じです。

折角塗装しましたが、いよいよベルカット仕様に改造していきます。今回はYAMAHAのYHR-567D(ホルン)用のベルカットリングを使用しました。手に入りやすいパーツではこれが一番寸法が近いことを事前に調査していました。約3mmの径の差がありましたが、リングの位置はほぼ同じでした。

位置を決めて、手元にあった木工用のこぎりで切断します。

混合式エポキシ接着剤でリングを固定します。まずは雄ネジから、固定します。

これで完成!と思い吹いてみると、思ったよりリングを付けた効果が出ません。それどころか若干吹きづらい感じです。原因は木工用のこぎりを使用したことでベルフレアと胴の間に約3mmのクリアランス(削った幅)が出たことでした。

これをエポキシ充填剤で埋めては削り、寸法を確認しては埋め、を繰り返し、、、再塗装してようやく完成です!


完成ギャラリー

今度はハグマンバルブセクションを接続しています。ご覧のように機械的に接続しています。

ケースは残念ながらベルカット用ではありません!でも軽量で持ち運びも楽です。

これを収納したいというためだけに、高額なマーカスボナーのケースが欲しいと思ってしまいます。

おまけ

いかがでしたでしょうか。

ちなみにYHR-567Dとは共用パーツを使用しているため、こんな風にお互いのベルを換装可能です。(※トロンボーンはベルフレアが干渉するため、スライドが取り付けできません。)改造・カスタマイズのブログは作業期間が長くなるため、レスポンスよくアップできないのですが、次のアイディアを思いついたらまたご紹介したいと思います。

それでは次のブログをご期待くださいませ!

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